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東京地方裁判所 昭和63年(ワ)6990号 判決 1991年2月15日

原告

岩上健一

ほか二名

被告

遠州共栄運輸株式会社

ほか一名

主文

一  被告らは、原告岩上健一に対し、各自一四五六万六六五六円及びこれに対する昭和六二年八月一七日から支払い済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告岩上健一のその余の請求並びに原告岩上明及び原告岩上タネの各請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用はこれを五分し、その四を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。

四  この判決は一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは、連帯して、原告岩上健一(以下「原告健一」という。)に対し六九〇〇万円、原告岩上明(以下「原告明」という。)に対し一二〇万円、原告岩上タネ(以下「原告タネ」という。)に対し一二〇万円及びこれらに対する昭和六二年八月一七日から支払い済みまで年五分の割合による金員を各支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二請求の原因

一  本件事故の発生

1  日時 昭和六二年八月一七日午後七時三〇分ころ

2  場所 山梨県都留市境町字作新海道四六五―二中央高速自動車道大月河口湖間下り車線西桂バス停留所付近

3  加害車 被告高橋圭二(以下「被告高橋」という。)運転の大型貨物自動車(浜松一一か三二九一、以下「被告車」という。)

4  被害車 原告健一運転の自動二輪車(一練馬す四四六二、以下「原告車」という。)

5  事故態様 被告高橋は、昭和六二年八月一七日午後七時五分ころ、右場所において、被告車を運転走行中、右後輪内側タイヤがパンクして、同タイヤの上皮トレツド部分(以下「本件破損タイヤ」という。)が離脱したことに気付き、西桂バス停留所近くに一旦停止して、二〇〇ないし三〇〇メートル後に本件破損タイヤが離脱していることを確認したものの、何らの処置を取ることなく本件破損タイヤを同所に放置したまま走り去つたため、原告車を運転して走行してきた原告健一が、これに衝突し、乗り上げ、転倒し、中央分離帯に激突し、原告健一は、本件事故により背部、腹部外傷、後腹膜出血、両腎損傷、脾臓損傷、脳挫傷、両下肢挫創の傷害を負つた。

二  責任原因

1  被告遠州共栄運輸株式会社(以下「被告会社」という。)は、被告車を所有し、これを自己のために運行の用に供していたものであるから、自賠法三条にもとづき原告らが本件事故で被つた損害を賠償すべき責任がある。

2  被告高橋は、被告会社の業務のために被告車を運転中、本件破損タイヤを離脱させたものであり、離脱した本件破損タイヤを路上に放置すれば高速で走行してくる後続車がこれに乗り上げるなどして事故が発生することを十分に予見できたのであるから、自ら本件破損タイヤを除去し、発煙灯をたくなどして後続車に危険を知らせ、また、非常電話を使用して高速道路整備隊大月分駐所、日本道路公団八王子局大月管理事務所に通報して本件破損タイヤの除去を依頼するなど事故の発生を未然に防止すべき注意義務があつたにもかかわらず、何らこれらの行為をすることなく漫然と立ち去つたため、本件事故を発生せしめたものであるから、被告高橋は民法七〇九条にもとづき、被告会社は民法七一五条にもとづき、原告らが本件事故で被つた損害を賠償すべき責任がある。

三  損害

1  原告健一につき

(一) 治療費 一二一万七七四〇円

原告健一は、富士吉田市立病院に昭和六二年八月一七日から同年一一月一八日まで入院して治療を受け、中央鉄道病院に昭和六二年一一月一八日から昭和六三年二月一三日まで入院して治療を受け、富士吉田市立病院に九六万七七二〇円及び中央鉄道病院に二五万〇〇二〇円の自己負担分の治療費等合計一二一万七七四〇円である。

(二) 入院雑費 二一万八四〇〇円

前記入院期間中に要した雑費である。

(三) 付添費 四七万円

富士吉田市立病院に入院中、家族が付添いしたために要した付添費である。

(四) 交通費 一五万〇四六〇円

家族が付添いのために要した交通費である。

(五) 逸失利益 七一〇九万二三〇三円

原告健一には、右入院治療にもかかわらず、脊髄損傷(第一仙髄以下)により脊柱に運動障害が残存し(前屈三〇度、後屈一〇度、右屈三〇度、左屈三〇度、右回旋三〇度、左回旋三〇度)、体幹の動きが著しく制限されていて、特に座り動作は困難となつている。また、第一仙髄以下の神経系統の障害により会蔭部中心より両下肢背面にかけてと両下肢第四肢、第五肢の知覚障害が残存し、同様の神経系統の障害により両下肢背面の筋肉の随意運動が困難となつており、歩行障害が残る状態である。さらに、膀胱直腸障害のため随意の用便、排尿が困難となり、腹部を自ら手で押してこれを行い、残尿感が持続したり、時々尿失禁が生じたりし、また、生殖器障害がある。

これらの障害により、原告健一は、少なくとも労働能力を九二パーセント喪失しているところ、本件事故がなければ二二歳から六七歳に至るまで昭和六一年度賃金センサス男子労働者産業計、企業規模計、学歴計全年齢平均賃金年額四三四万七六〇〇円を得ることができたと考えられるので、原告健一の逸失利益をライプニツツ方式、係数一七・七七四〇で現価を求めると七一〇九万二三〇三円となる。

(六) 入院慰謝料 一五〇万円

(七) 後遺障害慰謝料 一七〇〇万円

(八) オートバイ代 二一万円

(九) 弁護士費用 九一〇万円

2  原告明及び原告タネにつき

(一) 慰謝料 三〇〇万円

原告明及び原告タネは、本件事故により原告健一の死亡にも比肩すべき大きな精神的苦痛を被つたから、これを慰謝するには原告明及び原告タネにつき各一五〇万円が相当である。

(二) 弁護士費用 三〇万円

原告明及び原告タネにつき各一五万円である。

四  填補

原告健一は、自賠責損害賠償金として四四三万二〇〇〇円、健康保健組合高額療養費支給金として八九万〇六一四円の支払いを受けた。

五  よつて、原告健一は九九一〇万八二八九円、原告明及び原告タネは一六五万円の損害賠償請求権を被告らに対して各有するところ、本件訴訟においては、原告健一につき六九〇〇万円、原告明及び原告タネにつき各一二〇万円並びにこれらに対する本件事故日である昭和六二年八月一七日から支払い済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

第三請求の原因に対する認否

一  請求の原因一項は、1ないし4は認め、5については、被告高橋が昭和六二年八月一七日午後七時五分ころに本件事故発生場所付近を走行していたこと、西桂バス停留所近くに一旦停止したこと、本件破損タイヤが離脱していることを確認したこと及び原告健一が受傷したことは認め、その余は知らない。

二  同二項は、被告会社が被告車を所有し、これを自己のために運行の用に供していること、被告高橋が被告会社の業務のために被告車を運転していたことは認め、その余は否認ないし争う。

三  同三項は、原告健一の治療経過の点は認め、後遺症につき、原告健一にその主張の症病名の存することは認めるが、その具体的内容、程度、本件事故との因果関係については知らない。同三項のその余についても知らない。

四  同四項は、自賠責損害賠償金九六万円が支払われたことは認め、その余について知らない。

五  同五項は争う。

第四抗弁

原告健一にも前方不注視、速度違反があるから過失相殺すべきである。

第五証拠

本件記録中証拠関係目録記載のとおりである。

理由

一  請求の原因一項の1ないし4は当事者間に争いがなく、5については、被告高橋が昭和六二年八月一七日の本件事故日の午後七時五分ころに本件事故発生場所付近を走行していたこと、西桂バス停留所近くに一旦停止したこと、本件破損タイヤが離脱していることを確認したこと及び原告健一が受傷したことについては当事者間に争いがなく、これら争いのない事実と成立に争いのない甲第一号証ないし甲第七号証、甲第九号証、原告健一本人尋問の結果によれば、次の事実が認められる。

1  被告高橋が、昭和六二年八月一七日午後七時五分ころ、被告車を運転し、中央高速自動車道大月河口湖間下り車線(以下本件道路」という。)を走行中、本件事故発生場所である山梨県都留市境町字作新海道四六五―二西桂バス停留所付近(三八三・七キロポスト付近)に差し掛かつた際、被告車の右後輪内側のタイヤがバーストし、同タイヤ上皮のトレツド部分(本件破損タイヤ)が離脱し、同所付近の追越車線上に落下した。

2  被告高橋は、被告車の後輪がパンクしたと感じ、西桂バス停留所付近に被告車を停車させ、同車から下車して破損したタイヤのチユーブを外し、同所付近路側帯上に捨て、その際、同所から大月インター方面に向かい約二五〇メートル離れた本件道路追越車線上に本件破損タイヤが落下しているのを確認した。

被告車が停車したところから河口湖方面に向かい約三五メートル離れた西桂バス停留所脇に非常電話が設置されているが、被告高橋は、同電話を使用して本件道路管理事務所に通報して落下物である本件破損タイヤを除去を依頼することなく、また、自ら本件破損タイヤを除去することもせず、発煙灯をたくなどして後続車に本件破損タイヤの存在に注意を促す措置を取ることもせず、本件破損タイヤを放置したまま同所から走り去つた。

3  原告健一は、昭和六二年八月一七日午後七時三〇分ころ、原告車を運転して本件道路追越車線を原告車の灯火をロービーム、ギヤを六速、時速約九〇ないし一〇〇キロメートルで走行し、事故発生場所付近に差し掛かつた際、本件破損タイヤから大月インター方面に向かい約三四・八メートル離れた地点で異常走行となり、擦過痕を残しながら本件破損タイヤに向けて走行し、本件破損タイヤ落下地点から河口湖方面に向かい約六・九メートルの間に原告車のタイヤ痕を残し、更に原告車の赤色塗料を路面に付着させた後、転倒のスレ痕約六二メートルを残し、擦過痕の始まりから約一〇二・八メートルして原告健一が転倒し、擦過痕の始まりから約一二一・七メートルして原告車が左側を下にして止まつた。

以上の事実からすれば、原告健一は、原告車の走行する前方約三四・八メートル以上手前付近で、本件破損タイヤが存在しているのに気付き、高速走行する原告車が落下物に接触するなどすれば転倒事故による危険が高いことから、回避措置を取つたものの、ブレーキ操作、ハンドル操作等の不適切から異常走行となり、本件破損タイヤに接触し、転倒して傷害を負つたものと認められるところ、原告健一が、異常走行に陥つたのは本件破損タイヤから約三四・八メートル離れた地点ではあるが、異常走行後に本件破損タイヤに接触したうえで転倒していることからすれば、原告健一の転倒は、本件破損タイヤと接触ないし接触したと同視しえることによるものとするのが相当であるから、本件破損タイヤを放置したことが原因で本件事故が発生したと認められるから、これらの間には相当因果関係があるものと認められる。

二  請求の原因二項については、被告会社が被告車を所有し、自己のために運行の用に供していること、被告高橋が被告会社の業務のために被告車を運転していたことについては当事者間に争いはなく、前記認定事実によれば、被告高橋は、本件破損タイヤが追越車線上に落下しているのを確認したのであるから、後続車がこれに接触するなどして事故が発生する危険を予見し、自ら本件破損タイヤを除去し、あるいは本件道路管理事務所に通報して除去させるなど事故発生を未然に防止すべき注意義務があるのに、これを怠り、何らこれらの行為をすることなく漫然立ち去つた過失があるから、被告高橋は民法七〇九条にもとづき、被告会社は民法七一五条、自賠法三条にもとづき、原告らが本件事故により被つた損害を賠償すべき責任がある。

三  損害

1  原告健一につき

(一)  治療費 一二一万七七四〇円

原告健一が富士吉田市立病院に昭和六二年八月一七日から同年一一月一八日まで入院して治療を受け、中央鉄道病院に昭和六二年一一月一八日から昭和六三年二月一三日まで入院して治療を受けたことについては当事者間に争いはなく、成立に争いのない甲第一八号証の一ないし一三、甲第一九号証の一ないし三四によれば、右入院治療のため富士吉田市立病院では九六万七七二〇円の、中央鉄道病院では二五万〇〇二〇円の合計一二一万七七四〇円の治療費を要したことが認められる。

(二)  入院雑費 一八万一〇〇〇円

原告健一が前記各病院に入院して治療を受けたことについては当事者間に争いはなく、原告明本人尋問の結果、弁論の全趣旨によれば、原告健一は、右入院一八一日の期間中において諸雑費を必要としたことが認められるところ、前記傷害の内容、程度、入院期間等からして、一日当たり一〇〇〇円、一八一日分の合計一八万一〇〇〇円の入院雑費を要したものと認めるのが相当である。

(三)  付添費 四二万三〇〇〇円

成立に争いのない甲第一一号証、原告明本人尋問の結果、弁論の全趣旨によれば、原告健一が富士吉田市立病院に入院していた昭和六二年八月一七日から同年一一月一八日までの九四日間は、原告健一の家族による付添看護を必要としたことが認められるところ、前記傷害の内容、程度等からして、家族付添費として一日当たり四五〇〇円、九四日分の合計四二万三〇〇〇円を要したものと認めるのが相当である。

(四)  交通費 〇円

原告健一は、家族が付添看護したための交通費一五万〇四六〇円を主張するが、右交通費は前記付添費で賄われているものとするのが相当であるから、原告健一の右主張は採用しない。

(五)  逸失利益 一五四五万四八四八円

成立に争いのない甲第一三号証ないし甲第一七号証、原告健一及び原告明の各本人尋問の結果によれば、原告健一は、本件事故による傷害で後遺障害を残し、主訴又は自覚症状として歩行障害、体幹障害、頭重感、ふらつき、排尿障害等があり、他覚症状及び検査結果として第一仙髄以下の不全麻痺で股関節外旋、膝関節屈曲、足関節底屈の筋力低下を認め、会陰部中心の異知覚が強く、腰掛け動作は困難、体幹の機能障害、膀胱直腸障害等があり、脊椎の変形及び運動障害としては腰仙椎部前弯消失、運動障害(前屈三〇度、後屈一〇度、右屈三〇度、左屈三〇度、右回旋三〇度、左回旋三〇度)であり、中央鉄道病院リハビリテイシヨン室の山崎裕功医師作成の身体障害者診断書・意見書には、身体障害者福祉法一五条三項の意見として、原告健一の障害の程度は、身体障害者福祉法別表に掲げる障害の二級相当とする参考意見が見られるところ、原告健一は、上肢運動機能は正常で、下肢運動機能は平地、階段とも杖または支持を必要としないがぎこちなく、知覚は上肢は正常であるが下肢は明白な知覚障害があり、膀胱は高度の排尿困難があり、下肢筋力低下のためつま先立ちが両足でやつとできる程度で、片足では不可能であり、速く歩けないし、坂道を上るのが困難、飛んだり跳ねたりはできず、立ち仕事は何かにつかまつてしかできず、物を持つたりするとフラフラし、長時間の立位で各関節が不安定になるなどの支障があるが、寝返りすること、椅子に腰をかけること、洋式便器に座ること、排尿の後始末をすること、はしで食事をすること、シヤツを着て脱ぐこと、ズボンをはいて脱ぐこと、タオルを絞ること、背中を洗うこと、屋外を移動すること、公共の乗物を利用することなどは可能であることが認められ、また、事故後、東海大学短期大学情報処理工学科夜間部で学び、現在、公務員として杉並区役所に勤務し、同区西荻窪にある西荻図書館で本の貸出カウンターの作業に従事して収入を得ていることが認められる。

原告健一の右後遺障害の内容、程度、現在従事する仕事内容等によると、原告健一は、少なくとも労働能力の二〇パーセントを、その労働可能期間である二二歳から六七歳までの間喪失ないし制限されているものとするのが相当と認められるところ、原告健一が、本件事故当時、東京工業専門学校電子工学科に在籍していたことからすれば、本件事故がなければ、右労働期間中において、少なくとも昭和六一年賃金センサス男子労働者産業計、企業規模計、学歴計、全年齢平均賃金年額四三四万七六〇〇円を得ることができたものと認めるのが相当であるから、原告健一の逸失利益の現価をライプニツツ方式、係数一七・七七四〇で計算すると一五四五万四八四八円となる。

(六)  入院慰謝料 一五〇万円

原告健一の前記傷害の部位、程度、治療の内容、経緯、入院期間等諸般の事情を考慮して一五〇万円が相当と認められる。

(七)  後遺障害慰謝料 五〇〇万円

原告健一の前記後遺障害の内容、程度、原告健一の年齢、性別、職業、収入、家族関係等諸般の事情を考慮して五〇〇万円が相当と認められる。

(八)  オートバイ代 二一万円

原告健一本人尋問の結果により成立の認められる甲第二〇号証、弁論の全趣旨により成立の認められる甲第二一号証の一、二、甲第二二号証、原告健一本人尋問の結果によれば、本件事故により原告健一所有の原告車が破損し、同車の現価二一万円を超える修理代三九万七〇二〇円を要することが認められるので、原告車の現価相当二一万円を認める。

(九)  以上損害額合計 二三九八万六五八八円

2  原告明及び原告タネにつき

原告明及び原告タネは、本件事故により原告健一の死亡にも比肩すべき精神的苦痛を被つたとして慰謝料各一五〇万円を主張するが、原告健一の傷害の程度、内容等からして死亡に比肩すべきものとまでは認められず、右原告らの精神的苦痛は、原告健一が慰謝されることで慰謝されたものとするのが相当である。

四  過失相殺

被告らは、原告健一にも前方不注視、速度違反があるから過失相殺すべき旨主張するところ、高速道路上に本件破損タイヤのごとき落下物を放置することの危険は極めて大きく、これが原因でいつかは必ず事故が発生すると考えても差し支えないものであるから、被告高橋が、本件破損タイヤの落下を確認したにもかかわらず、また、本件破損タイヤが黒色で、時刻も午後七時五分を過ぎるのであるから、その発見が走行車両にとつて困難になることも予想されるのに、そのまま放置して走り去ることは違法性が極めて大きいものと言えるので、原告健一が原告車の灯火をロービームにしていたこともあり、本件破損タイヤの発見が遅れたと考えられること、制限速度八〇キロメートル毎時を多少越えて追越車線を走行していたことや他に車両もなく、道路幅もあり、走行の自由が大きくあつたから、回避の可能性もあつたことが認められるなどの諸事情を考慮して、双方の過失の内容、程度等を比較すると二割を過失相殺するのが相当と認められる。

過失相殺後の損害額合計 一九一八万九二七〇円

五  填補 五三二万二六一四円

原告健一は、自賠責損害賠償金四四三万二〇〇〇円、健康保険組合高額療養費支給金八九万〇六一四円の合計五三二万二六一四円の支払いを受けている。

填補後の損害額合計 一三八六万六六五六円

六  弁護士費用 七〇万円

弁論の全趣旨によれば、原告らは、原告ら代理人に本件訴訟を委任し、弁護士費用を支払うことが認められるところ、本件訴訟の審理の経緯、認容額等諸般の事情によれば、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用としては、原告健一について七〇万円が相当と認められる。

七  よつて、原告健一は、被告らに対し、各自一四五六万六六五六円及びこれに対する本件事故日である昭和六二年八月一七日から支払い済みに至るまで民法所定の年五分の割合による金員の支払いを求める限度で理由があるから、この限度で認容し、原告健一のその余の請求並びに原告明及び原告タネの各請求はいずれも理由がないので棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条を、仮執行宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 原田卓)

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